| 「あぁ、とうとうきてしまった。」 ここに真っ青になって考え込んでいる奴がいる。 彼女はR。明日ゼミで発表することになっている人物の一人である。 題は「特別な体験」。 そう彼女はいま、今週最大の危機に直面しているのである。 「あぁこんなことなら、セロリ入り牛乳でも飲んでおくべきだったなぁ。」 セロリと牛乳はRの嫌いな食べ物ベスト10で上位に ランクされるであろう食品である。 どうやら独特の香りとその他アルファーとの相性が合わないらしく 久しく食べていないようだ。 「そうすれば一応特別な体験になったのになぁ」 だがやめておいて正解である。 Rはとりわけ牛乳とは犬猿の仲らしく、 会えば必ずと言っていいほど喧嘩をするからだ。 一応下痢でRが勝つのだが、やはり発表には適さないだろう。 発表の場を一気に氷点下に落としたくはない。 しかも次の時間が昼だというのも若干は考慮すべき点である。 自分が自分の意思で読むのはいいのである。 いやだと思えばいくらでも中断できる。 しかし発表となれば違う。 この内容を聞く人や読む人にとっては まずエスケープ不可能な事態に置かれる。 つまりこの発表が相手の貴重な昼に影響を及ぼすのだ。 「あ〜そうか、りんごを丸かじりすればよかったんだ。」 りんごは実に栄養価の高い食品である。 毎日一個のりんごが医者を遠ざけるという言葉があったり、 一昔りんごダイエットが流行ったりもした。 まぁ結局りんごだけではカロリー上不具合があり、効果は期待できないのだが。 いやいや問題はそこじゃない。 Rはりんごを食べると真夏であっても真冬であっても 鳥肌になるという怪奇現象があるのだ。 別に他は大して影響がないので真夏だとクーラー代わりになる。 ...3分ももたないが。 「ん〜でもりんご嫌いなんだよね〜」 寒いから。これが理由だろう。 時々思うのだかRはたまに一般常識を 逸脱している面があるのではないかと思う。 普通の人であれば「美味しいから好き」「歯ごたえが嫌い」などを 理由にあげるだろう。 「寒いから嫌い」...やはり何かが違うようだ。 「うにゃー!!考え付かない(泣)」 とうとうRがきれた。まったくどうしようもない奴だ。 切れながら問題解決ができない自分に落ち込んでいる。...器用だな。 落ち込むのは人が寝静まってからにしてくれとでも言いたかったが、 さすがに言いすぎかと思いしばらく様子を見ることに... 「寝る。」 はぁ!?ちょっと待ったゼミどうすんだ。 いくらなんでも寝るはないだろう。今はまだ夜の八時だ。 発表は明日ならRの力量を考えても今やるしか道はない。 Rはただでさえ行動が遅いのだ。 大抵の宿題はすべて前日の夜格闘するのが主だ。 そう切羽詰った状況を通り越して 自分の首が絞まりきって窒息する一歩手前にならないとやらない。 しかしまぁ、一応は宿題をやるから、土壇場に強いタイプといえなくもだろう。 短所は長所にもなるとは言うが、...ものはいいようだな。 Rが寝る用意をしている。さっきの言葉は本気だったようだ。 バカな奴。まだ時間は十分あるし、まさか諦めるとは。 意外すぎてちょっと落胆した。 しかしRは目覚まし時計を夜の11時にセットしているようだ。 ...まったく要点を押さえた現実逃避のうまい奴だ。 そういえば今日は朝の二時まで掛かって 今日提出のレポートを仕上げていた。(再提出になったけど) 寝たのは三時で起きたのは六時。 それでいて授業中居眠りさえしないんだから まじめもどきと言うかなんと言うか。 本人はというとあっという間に寝てしまったようだ。 いつも寝つきの悪い、というか一時間ぐらい布団の中で ゴロゴロしているRには考えられないことだ。 毎日お疲れさん...じゃなくてご苦労さん。(笑) 起きたらまだ一字も書いていない用紙を前に頭を抱えるのだろう。 しかしきっと立派かどうかは知らないが、なんとか書き上げて 平然に発表を終わらせてしまうのだろう。 あとは友達に書くの大変だったーと茶化して皮肉って笑い話にしておしまい。 特別な日のために費やす準備の日があるからこそ 特別な日は意味を成す。 それならばその準備の日こそが 特別な経験に値するのだろう。 ゼミの発表を仕上げる特別な経験に、乾杯。 あぁ目覚ましが鳴り出した。 ended これも大学関連です。 2005年の夏にゼミで発表した作品です。 Rは私で読んで分かるとおりその時の私そのものです。 ...と言うか話の続きで夜の11時に起きてから 自分をもう1人の自分から振り返りつつ書いたものです。 もう1人の自分のイメージはドリーム小説のサンダース(笑) なんか妙にゼミやら周りの人とかにうけたし、 書いてて楽しかったので またこの手の話を書きたいなーと思っています。 |